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nico

運転は父で地図は母、私は窓の外の景色に夢中だった

子どもの頃、父と母と三人でよく海へ行った。
フェンダーミラーに流れるように映る景色を見るといつも心が弾んだ。
湘南まで車で約一時間半。
夏の海水浴も、それ以外の季節に磯遊びをするのも、いつも湘南の海だった。
夏の夕暮れ時、鎌倉の海岸線はいつも渋滞する。
海ですっかり陽に焼けた肌に冷房の効いた車内が心地よかったものだ。
オレンジ色の夕陽から空は段々と薄闇に包まれて、車はシルエットに変わる。
幼心に並んだ赤いテールランプが綺麗だと思ったのを憶えている。
渋滞に飽きた私は後部座席に寝転んで、波で洗われた硝子片や貝殻を眺めたものだ。
すっかり夜の帳に包まれた車内は普段は聞かないラジオからは流暢な英語を話すDJの声がして、そんな幸せな家族の思い出はいつも愛車と共にあった。
父が運転している隣には、地図を読むのが下手な母がいて、私はいつも後部座席から乗り出して話に加わった。

今は私も自分の家族を持ち、子どもたちがいる。
一緒に出かけた時の夕陽の色を、車の窓を開けて感じた潮の香りを、家族だけの特別な時間がそこにあったことを、私も子どもたちに伝えたいと思う。

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最終更新日:2016-06-30 15:33

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